返済不要というだけではない
数多くの制度の中から自社の事業に合う助成金や補助金を見つけ出し、申請期間に間に合うよう準備を整え、申請が通った後も定期的に進捗報告を行い、対象事業が完了してから漸くお金がもらえる…おまけに、かけた労力に見合う金額がもらえるとは限らない。
「そんなに大変で、見返りが少ないのなら、審査に合格したらすぐにお金を振り込んでもらえる銀行融資の方がいいのでは?」そう考える人は多いかもしれません。
しかし日本政策金融公庫の創業融資と同様に、創業時の資金調達方法として、助成金・補助金は強くお勧めできます。
①返済不要であること
繰り返しになりますが、助成金も補助金も「タダでもらえるお金」ではありません。助成金は雇用・労働環境を整えることが目的であり、もらえる助成金はその結果でしかありません。また補助金も、会社にとって必要な事業を自力で行った後に、使用した費用の一部を補助してもらえるというものです。
返済のストレスがなく、利息を払って損をすることもない、お得な資金などではありません。
それでも、助成金や補助金を受け取ることができれば、それは「自己資金」になります。
自己資金=企業家個人の貯金というイメージがありますが、正しくは、「自己資金=返済不要のお金」です。この自己資金を増やすことで、次のようなメリットが生まれます。
☆公的機関からの融資が受けやすくなる。→日本政策金融公庫の「新創業融資制度」は、融資希望金額の2分の1程度の自己資金があることが要件になっています。また、各自治体の創業融資制度でも、自己資金が要件になってるケースがあります。
☆金融機関からの融資が受けやすくなる。→金融機関が融資を決定する際、通常は決算書をもとに、利益を出しているか、財務状況に問題はないかを判断しますが、決算書が存在しない創業前または創業直後の場合は、事業計画書とともに収支計画書もチェックします。この収支計画書で特に重視されるのが「自己資金がどれだけあるか?」です。どれほど事業資金計画書が優れていても、100%利益が出なかったとしても自己資金が十分にあれば回収することができるため、金融機関にとって安心材料になります。
②政府の「お墨付き」がもらえること。
厚生労働省の助成金を受給したということは、国が求めている労働環境を整備したという証です。たとえば正社員を雇えるほどの財政基盤がある、教育を受けた質の高い人材が働いている、ムダな残業を排除した効率的な業務が行われているということであり、会社が安定して成長・発展するプラス要素になります。そして経済産業省の補助金を受給したということは、その事業について国が「社会的に有用な事業であり、発展性がある」というお墨付きを与えたことになります。その事業について政府が高く評価をしていることは、大きなアドバンテージと言えるでしょう。
お金をもらえる=良い経営の第一歩
さらに、経営革新等支援機関のサポートを受けるキッカケになる、事業計画書や収支計画書の作成、面接でのアピールを経験できるなど、会社を経営する上で不可欠な専門家とつながり、資金調達に必要なスキルを身につける、最初のステップを踏むことができます。「返済しなくていいのは魅力的だけど、面倒…」など思わないでください。長い目で見れば、支払った費用や労力以上の見返りが必ずあります。会社を立ち上げれば、10年や20年、もしくは50年先まで考えた経営を行う必要があります。そうした長期視点を持たず「すぐに効果が出ないから」と、必要な努力を怠るような人は、おそらく会社を作っても5年ともたないでしょう。
助成金や補助金を受給することは、社会のニーズに応えることです。そもそも会社は、個人が儲けるために存在するものではありません。自分がやりたいことをサービスや商品にしたところで、それは単なる自己満足であり、誰も見向きもしません。
会社が求めている商品やサービスを生み出して提供するからこそ、顧客がつき、利益が生まれ、会社の将来にわたって存続させることができるのです。利益が増えれば会社の規模を大きくし、より多くの雇用を生みだすことができます。会社は自分のために作るのではありません。
そこに生きる人々や社員の生活を豊かにし、地域を元気にして、国を発展させるために作るものなのです。その意義を学ぶためにも、助成金・補助金の活用をお勧めします。